2011年11月3日木曜日

自転車通勤族の心得 日本の車道は欧州に比べ危険?


交通手段としての自転車への依存度が高まる中、警察庁は「自転車は車道」の原則を徹底させるという。しかし、日本の道路は「走りにくい」と、自転車通勤族らの間で評判が悪い。道路交通法が複雑で「例外だらけ」という批判や、自転車を法律の「枠外」にとらえる国民性を指摘する声もある。自転車の秩序はなぜ乱れ、一貫しないのか?(日出間和貴)
 
概念の違い

 「自転車は車道の左側を走る」。日本ではこのルールが徹底されず、歩道上をデタラメに疾走する通勤・通学の光景が日常的に見られる。
 「ルールを厳格に守るドイツ社会では、自転車もオートバイと変わらない二輪車として認識されており、自転車に乗る人も法律や規則に従うのは当然だと考えられている。ヨーロッパの自転車は構造上の作りが頑丈で高価だという理由もあるが、旧市街地から自動車を締め出す工夫が進められるなど、自転車が車道を走りやすい環境にある」
 『ここが違う、ヨーロッパの交通政策』(白水社、1995円)の著者でセルビア在住のジャーナリスト、片野優(まさる)さんは、自転車という乗り物に対する概念の違いを指摘する。
片野さんによると、ヨーロッパでは自治体が中心となって自転車の普及と安全対策を行っており、イタリア北部の都市、フェラーラでは週末に自転車をレンタルすると、博物館や美術館が入場無料になったり、ホテルやレストランが割引になったりするサービスが実施されているという。
 片野さんは日本で自転車が安全な乗り物として定着するには、(1)自転車道の整備(2)危険をはらむ乗り物という交通意識への転換(3)交通弱者への配慮などモラル教育の徹底-の3つを訴える。
 日本でも車道の左側をラインや色で区切る「自転車レーン」を施すなどの交通政策がここ数年、各地で行われている。しかし、東京・亀戸にある自転車専用道は簡便な自転車レーンと異なり、車道の左側を「対面通行」の自転車道にして車道と区分する。一見、安全に配慮されているようだが、自転車同士がすれ違う際にハンドルやサドルが接触する可能性があり、かえって危険という批判も出ている。
 
走行に安全な環境を

 自転車愛好家のテレビプロデューサー、疋田智(ひきた・さとし)さんは「自転車にもルールがある」と繰り返してきた。著書『自転車ツーキニストの作法』(ソフトバンク新書、798円)で、「自転車が安全にスピードを出すためには決して歩道にいてはならない。それは歩道の弱者を脅かさないための必然」と訴える。
歩道には交通弱者である子供や妊婦、高齢者、目の不自由な障害者や車いすの人もいる。歩道においては自転車は「弱者」でなくなることを心得ておかねばならない。
 NPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基(しげき)事務局長は「日本の場合、自転車が車道走行することは危険がいっぱい」と注意を喚起する。
 「車道を走る技術や安全への意識が高く、ヘルメットの装備ができている人に車道が安全で快適と説得するのは簡単だが、そうした意識のない人に車道の左側を徹底させるのはかえって危険だ。英国では自転車に安全な走行空間を提供することで、5年間で2倍近い利用者が生まれたという報告がある。まずは『車道の左通行帯』を自転車にとって安全な環境にすることが先決だ」と話している。


 
歩行者をはねる事故は全国で年間2760件

 道路交通法は自転車を「軽車両」と見なし、車道の左側を走ることを原則にしている。ただし、「歩道通行可」の標識がある歩道や、幼児や児童、70歳以上の運転、車道の通行に支障を生じる障害を持つ人などは歩道の通行が認められている。警察庁によると、自転車が歩行者をはねる事故は全国で2760件(平成22年)と深刻だ。同庁は歩行者の安全確保のため、自転車が通行できる歩道の基準を厳しくしていく方針だ。

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