2012年3月31日土曜日

起業家の成功の秘訣は「睡眠、食事、運動」


起業家の食生活は、カフェインとハンバーガーから、昆布茶とケールへと変化した。シリコンヴァレーの起業家でエンゼル投資家のケヴィン・ハーツが、成功の3条件を伝授する。
シリコンヴァレーの起業家たちがコーヒーをがぶ飲みし、朝から夜までピザを食べ続け、何日も徹夜する自己破壊の競争ゲームで闘う時代はもう終わった。
 いまの時代の起業家には、極度のストレスを感じながら高い業績を実現し、理性的に決定を下すことが求められる。先行き不透明な市場、減って行くキャッシュ、内部抗争、他社との競争、訴訟など、地滑り的な変化が起きる環境でバランスを保ちながら。
 起業家たちの間では、プロフェッショナル・スポーツの分野と同様に、適切な食事が常識になりつつある。こうした変化に最初に気づいたのは何年も前のことだ。当時のわたしはXoom社を設立しようとして、ヴェンチャーキャピタルのSequoia Capital社で多くの時間を過ごしていた。助言が必要なときは昼食を食べながらの会議を予定した。当時のわたしは極めつけの倹約家で、同社でタダ飯にありつけると分かっていたからだ。
 Sequoia Capital社では、決まって魚や脂肪分の少ないタンパク質と野菜が出された。大手金融機関でよくあるようなステーキやマティーニ、葉巻は出されなかったし、新興企業の定番メニューであるジャンクフードもなかった。Sequoia Capital社での食事は、生産性とパートナーの寿命を最大限に高め、拡大するようにできていた。こうした食事で生産性が最大限に高まるのは、必要に応じる形でエネルギーが放出されるからだ。炭水化物の多い食べ物やカフェインを摂ると一気にエネルギーが放出されるのとは対照的だ。
 こうした意識が体に染みついた結果、わたしは幸福になるための3つの条件を、いま経営している新興企業Eventbrite社のモットーにしようと意識的に努力してきた。
その3つの条件とは、睡眠、食事、運動だ。

  • 睡眠:
    長年の友人で投資仲間であるSquare社キース・ラボイズ最高執行責任者(COO)は、直属の部下全員のためにZeo社の睡眠モニターを購入した。この装置は、夜にBluetooth対応ヘッドバンドを着用して睡眠状態を追跡し、起床時に点数化された睡眠データを確認することができる。ラボイズ氏のチームは睡眠の影響を分析し、興味深いことに、夜によく眠れなかった日と比べて、睡眠データの点数が高い日のほうがよい決定を下していることを発見した。
  • 食事:
    起業家の食生活は、カフェインとハンバーガーから、昆布茶ケール(キャベツの仲間)、キヌア(タンパク質を多く含む穀物)に移行した。質の悪い食事を摂るとエネルギー放出にムラが出て効率が悪いが、これらの飲食物はそういうことがなく、仕事中のエネルギー放出を調整する。
  • 運動:
    現在会社を経営している起業家たちほど、体をよく動かす起業家は見たことがない。かつての起業家は自由な時間を『Xbox』でゲームをして過ごしていたが、いまの起業家は健康増進に力を入れている。例えば、PayPal社の創設者であるマックス・レヴチンは熱心なサイクリストで、Trulia社の社長サミ・インキネンは世界的なトライアスロン選手、Path社の最高経営責任者(CEO)であるデイヴ・モリンは、米国代表チーム級のスキーヤーだ。
 新興企業を経営することはマラソンであり、ベストな成績を出すには本物の自律が必要だ。あなたの最も価値ある資産は、あなた自身とあなたのチームなのだ。

2012年3月23日金曜日

「発射確認!」…そのとき直紀防衛相は 迎撃シミュレーション


4月12~16日までの間と予告された「衛星」打ち上げ。防衛省・自衛隊はどう対処するのかシミュレーションした。
 《4月×日午前11時30分 発射方向南 1発》
 防衛省は発射の1分後、「飛翔(ひしょう)体情報」を発表した。その頃、地下3階の中央指揮所は緊迫していた。
 「SEW入感」。アナウンスが指揮所に響く。SEWとは米国の早期警戒衛星の情報を指す。北朝鮮北西部の「西海衛星発射場」をとらえた衛星情報は、米本土→ハワイの米太平洋軍司令部→在日米軍司令部→防衛省-というルートをわずか10数秒で駆け巡る。
 自衛隊トップの岩崎茂統合幕僚長が自らSEWを確認すると、内局幹部がマイクで叫んだ。「発射確認」。即座に首相官邸地下1階の危機管理センターにも情報は伝えられた。発射から2分後のことだった。
 SEWで一定の着弾予測地点も割り出すことができ、海上自衛隊のイージス艦と航空自衛隊の地上配備のレーダーが一斉に探知に入る。その直後、指揮所に「下甑(しもこしき)探知」と連絡があった。下甑島(鹿児島県)に置く新型レーダーFPS-5がミサイルを捕捉したのだ。ほどなくイージス艦のレーダーも探知した。
 《11時37分 落下物1 落下推定地域は韓国・全羅道の西約×キロ》
 発射から7分後。弾道ミサイルから切り離された1段目は韓国沖に落下。ミサイル本体は沖縄方面に近づいてくる。

「領土・領海に飛んでくれば撃ち落とします」。防衛省11階の省議室にいた田中直紀防衛相に内局幹部が報告した。沖縄本島と先島諸島の近海に展開したイージス艦2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)をいつでも発射できる状態だ。
 迎撃の法的根拠は自衛隊法の「弾道ミサイル等に対する破壊措置」だ。有事での防衛出動とは異なる平時の運用で、「等」には衛星も含まれる。措置には(1)日本に飛来する恐れがある場合、防衛相が首相の承認を得て迎撃を命令(2)飛来の恐れが「ある」とは認められなくても事態が急変する可能性がある場合、防衛相が事前に迎撃を命令-の2通りがあり、今回は後者だ。
 「防衛相の職責は重いんだな」。大きな重圧を感じた田中氏はコーヒーをすすった。
 発射から10分、弾道ミサイルは沖縄本島の西上空を通過した。このままフィリピン方向に飛行すれば迎撃する必要はないが、海・空自の統合任務部隊指揮官として横田基地(東京都)で迎撃を指示する斉藤治和航空総隊司令官は気が抜けなかった。2006年7月にテポドン2号は発射数十秒後に空中分解しているからだ。
 先島上空で部品が落下したら…。そのとき、高射部隊の隊員の言葉を思い出した。「PAC3はミサイル本体から部品に追尾対象を切り替えられます」。PAC3が最後の砦(とりで)となる。

2012年3月20日火曜日

“国策”地デジの影…SEは鬱率3倍


最後の言葉「もう一度だけ、会社に戻る」

 「命が大事。もう会社を辞めて」
 神戸市須磨区の西垣迪世(みちよ)(66)は平成17(2007)年秋、鬱病で休職し帰省していた一人息子の和哉に、たまりかねて言った。見るからに疲れ果てていたからだ。
 就職氷河期のさなか、システムエンジニア(SE)として川崎市内の会社に入って4年目。日本有数の大手企業の子会社だったが、人間らしく働かせているとは到底思えなかった。
 「もう一度だけ、会社に戻るよ。それでダメなら帰ってくる」。最後に和哉は母を気遣うようにそう言い残し、社員寮へと戻った。そして復職から約2カ月後の18年1月、鬱病の治療薬を大量に飲んで死亡した。27歳だった。
 生前、和哉は迪世にこう漏らしている。同僚にも鬱病患者が多く、自分だけ弱音を吐くわけにはいかないこと。上司の期待に応えたい気持ちがまだあること。もしこのまま退職しても、再就職は難しいこと…。
厚生労働省が発表する新卒とパートを除く有効求人倍率は5年以降、毎年1倍を切っている。正社員に転職したくても、全員には職がないという現実は、たしかに厳然としてあったのだが、「同僚にも鬱病患者が多い」とは、何を意味していたのか。
 「過労自殺」につながる精神疾患での労災申請が急増している現状を踏まえ、厚労省は昨年11月、新しい認定基準をまとめた。2カ月連続で月120時間残業すれば「強い心理的負荷」に当たる-などと例示し、審査を迅速にするのが目的だ。
 迪世のケースは同年3月の東京地裁判決で労災認定されるまでに、約5年を要している。その過程で会社側は、和哉と同じ14年入社組の6人に1人がメンタル不調を訴えた経験があった事実までも明かしていた。
 「なぜ僕が止められなかったんだ」。同僚の一人で和哉の友人でもあった清水幸大(29)=仮名=は、突然の訃報を聞かされたとき、自責という言葉では足りないほどの怒りが自分に対してこみ上げた。清水もまた、鬱病を患っていた。和哉と違ったのは、病状の悪化に耐えられずに退職し、営業職の非正規労働者に転職していたことだ。

合併や再編…メンタル対策継続できぬIT業界
当時、清水は和哉と食事をともにした機会に、見かねて「体を動かす職人のような仕事をした方がいい」と勧めていた。和哉は「そうやな」と答えただけだったという。
 「和哉がSEに誇りをもって働いていたのは分かっていた。ただ僕は、心と体を壊してまでやる仕事じゃないと思った。もっと強く辞めろと言っていればよかった」。清水は悔やむ。
 2人が鬱病になったきっかけは、入社1~2年目の平成15年に相次ぎ投入されたプロジェクトだった。在京テレビ局の地上デジタル放送のシステム開発だ。昨23年7月の完全移行に向け、地デジ化への準備は当時、すでに始まっていた。
 失敗の許されない“国策”だったためか、会社はワンフロアに最大231人ものSEを集め、作業を急がせた。狭い机と人いきれの中、2人は昼夜を問わず働き続けた。食事は弁当をかき込むだけ。終電を逃せば机に突っ伏して朝を迎えた。仮眠室やソファが与えられなかったからだ。
著書「ITエンジニアの『心の病』」(毎日コミュニケーションズ)がある精神科医の酒井和夫(60)は、SEなどのIT技術者は機械相手で会話が少なく、仕事を抱え込むおとなしい性格の人が多いため「一般企業の会社員に比べ鬱病の発症率が2~3倍ほど高い」と指摘している。
 酒井は警告する。「IT企業は、合併や再編が多く、大半が継続してメンタルヘルスに取り組んでいない。IT時代は若いSEを大量に生んだが、こうした若者も過労自殺の危険にさらされているのだ」

2012年3月15日木曜日

震災がれき受け入れ決議に関心薄く… 島田市議会

震災がれき受け入れの決議を可決した静岡県島田市議会。がれきの危険性をめぐる討論の後に反対に回った市議は3人で、傍聴に来た市民も数人。受け入れが既定路線となる中で、市民の関心の薄さをうかがわせた。
 決議の採決に先立ち、7人の市議が登壇。2人は「住民の声を聞くことが重要。いがみ合う事態は避けないといけない」などと反対したが、5人は「家族を助ける気持ちで受け入れるべきだ」と強調した。
 傍聴した市民は数人で、報道関係者が約20人。決議の可決を残念がり、手で顔を覆い、泣きだす受け入れ反対の男性もいた。
 本会議開会前には、ごみ焼却施設のある地区の佐藤博海自治会長らが市幹部を訪れ、受け入れ容認の文書を渡した。佐藤自治会長は「岩手県でがれきの山を見て、協力したいという思いを強くした」と話した。