2011年9月5日月曜日

モーター内蔵ホイールで333キロ走行 シムドライブ清水社長



EV(電気自動車)ベンチャーの「シムドライブ」が5月に発表した「SIM-LI(シム・レイ)」。タイヤホイールのなかにモーターを内蔵する「インホイールモーター」などの独自技術を搭載し、充電1回当たり333キロという市販車をはるかにしのぐ走行距離を達成した。シムドライブの清水浩社長に、開発の狙いやEVの将来性について聞いた。
 -走行距離で333キロを達成できた最大のポイントは
 「走行距離は、新しい燃費基準JC08モードで算定した。最大のポイントは、インホイールモーター技術にある。4つのタイヤそれぞれのホイールにモーターを内蔵することで、モーターの回転を直接、車輪に伝えることができるようにした。変速機も不要になるため、低出力で車輪を回すことができ、エネルギー効率が高まった。減速時の回生ブレーキによるエネルギー回収能力も高く、走行距離を伸ばせた」
 --技術的な特徴はほかにもあるのか
 「電池や電源装置など主要な部品を床下に収納する『コンポーネントビルトイン式フレーム』も、相乗効果をもたらしている。この仕組みで、走行距離を左右する重量を軽くできた。またエンジンがいらないためデザインの自由度が増したメリットを生かし、低空気抵抗の車体を開発したことも大きかった」
--先行開発車第1号の意味づけは
 「技術とビジネス的側面で2つの意味がある。技術面では、消費者に納得して使ってもらえるレベルの試作車ができた。車の購入ポイントは『加速感』『広さ』『乗り心地』。これにコストパフォーマンスを加味して、消費者は買うかどうかを決める。その点で、今回は十分満足のいくものに仕上がった。加速感でいえば、最高のスポーツカーには劣るが、一般の乗用車よりははるかに速い。エンジンルームがないため、車内も広く、前輪と後輪の車軸間距離が長いことが乗り心地に効果を発揮している。実際に乗ってもらったプロのテストドライバーからも『乗り心地は日本の高級車並み』との評価をもらった」
 --ビジネス面での効果は
 「シムドライブは、企業などから資金を募って先行開発を行い、技術移転することが基本的な事業モデルだ。広く技術の採用を促す『オープンソース』というやり方が、よちよち歩きながら機能し始めたということになる。先行開発車で原理的な方向性を出し、次に試作車をつくり、量産モデルを開発するという、おおまかに3段階で商品化する。シム・レイは第1段階だが、そのレベルで十分に高い価値の車になったる。まだ改良・改善点は多いがホップとしては合格点で、あとのステップ、ジャンプは、技術移転先の企業などから金と人をどれだけ投入してもらえるかにかかってくる」
--シム・レイに続く第2号プロジェクトも始動した
 「インホイールモーターとコンポーネントビルトイン式フレームという技術が基盤となることは変わらないが、今回は街なかでもスイスイと走れるような、もっと手軽なEVを想定している」
 --走行距離は意識していないのか
 「消費者の要求に応えられる満足のいくレベルに仕上げるつもりだが、それ以上に、今回は『日常に使って楽しい』と言ってもらえるEVの開発を目指す。イメージでは、2012年の3月には完成させ、発表する予定だ」
 --今回の参加企業には海外メーカーも入っている
 「参加34企業・機関には、仏自動車大手のプジョー・シトロエングループと、世界最大の部品メーカーである独ボッシュが参加している。欧州の一流企業に注目してもらい、開発に参加してもらえることは、世界にEV技術を広めることを目的としてシムドライブにとっては本当にありがたい。普及の後押しになると考えている」
 --電力不足で、EVを電源として利用する動きが広がっているが
 「国内の自動車が、夜間充電が基本のEVにすべて置き換わったとしても、消費電力は約1割増えるだけで、まったく発電施設を増やす必要はない。それだけでなく、EVは太陽電池でも十分に充電可能なうえに、シム・レイに搭載している約24・9キロワット時の電池の場合、一般家庭で使用する約2日分の電気を蓄えることができる。発電所を増やさず、太陽電池に対応できるうえ、蓄電池から家庭への給電が期待できるメリットから今後、EVの普及スピードが速まる可能性もある」

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